蟻をいじめる

2021/07/26

その他

t f B! P L


 庭の草を刈ってみると、ムクゲの根方に蟻の大きな巣があることに気づく。直径80センチくらいの円の中にいくつもの穴があり、全体的に土が盛り上がっている。


蟻の巣

このままではムクゲが駄目になるかもしれない。また、巣がどんどん広がっていったらちょっと怖い。


しかし、蟻殺しなどの薬を使って退治するのも、この環境保護の時代、ためらわれる。殺虫剤だらけになった蟻を何かの虫が食べ、その虫を何かの鳥が食べ、その鳥たちが奇病で死んでしまったりしたら……。


蟻をいじめたら嫌がってどこかにいってしまうのではないか。蜘蛛の場合は巣を何度か壊してやると別の場所に巣をかけるようになる。蟻だって同じではないか。


そう考えたのだ。


1日目。棒を使って、円になった蟻の巣に積み上がった土を平らにする。穴が見えなくなる。蟻たちは慌てふためいている。天変地異が起こったようだ。かわいそうだが、しかたがない。これで諦めてくれるだろう。


使用した棒


しかし、蟻たちは働き者だ。翌日見てみると、穴の上に積もった土をきれいに片づけている。元のように、穴だらけだ。やはり、蜘蛛よりは頭が悪いようだ。


2日目。今度は水をかけてみた。水責めだ。実は、庭木に水をやったときに、思いついてしてみただけだ。水をかけたあと、重くなった土をまたならして、穴が見えなくなるようにした。蟻も少しは溺れ死んだかもしれない。溺れることはなくても、穴の中に水が入って嫌がったかもしれない。


3日目。蟻たちの働きぶりは半端ない。翌日、またきれいに土を片づけて穴だらけにしている。穴の周りに土が積み上がっている。少し感心した。ひるんだ。蜘蛛よりも頭が悪いことがはっきりしたようだ、と馬鹿にしつつ、たじろぐところがあった。


4日目。やはり、殺虫剤をつかうべきか、と思う。でも、まあこのままでもいいかとあきらめかかる。働き者たちなんだし。家の中に入ってくるわけじゃないし。ほとんど匙を投げる。


5日目。また庭木に水をまいたあと、気を取り直して、最初の棒を使って、再度、蟻の巣を平らにする。今度は思い切って土を大きく周囲に拡げる。最初のときよりも、少し深めに土を削り取る。


6日目。やはり駄目だ。また、穴だらけになっている。どうしてこんなに働くのだ! どうして諦めてくれないのだ。


そう、蟻なのだから仕方がないのだ。こちらが諦めることにした。そのうちネットで調べてみよう。何かいいアイディアがあるかもしれない。


7日目。ふと庭を見ていると、何かが動いている。蟻たちが四列か五列になってせっせと移動している。よく見ると、一匹一匹、何か白いものを抱えている。


子供を運ぶ蟻


蟻たちは巣を移動させているのだ!


ううう、哀れな蟻たち。けなげな蟻たち。すっかり感動してしまう。やはり、蟻たちにも蜘蛛のように知恵があったのだ。


でも、蜘蛛は一匹だが、蟻は多数だ。どうして引っ越しを決めたのだろうか。女王蟻が命令を下したのだろうか。それともみんなで会議をしたのだろうか。多数決だったのだろうか、全員一致だったのだろうか。


わからないことだらけだ。しかし、とにかく蟻たちは引っ越してくれている。一匹一匹が白いものを抱えて動いているところを見ると、妙にかわいい。なんておりこうさんたちなんだ!


そういうわけで、ムクゲは救われた。穴だらけの蟻の巣もこれでなくなるだろう。


――でも、本当に? まだ、ちょっと心配ではあるが、期待して待とう!


★追記(2021/07/29)


上の記事を書いたのが7月26日。翌日と翌々日は、少しは数が少なくなったが、まだ巣の上を蟻が何匹もうろちょろしていた。


駄目だったか、と思ったが、待ってみることにした。ひょっとしたら残務整理をしているのかもしれない。


そして、今日、7月29日、巣の上に蟻が一匹もいなくなっていた!


ごめんね、蟻さんたち!


★追記2(2022年4月)


春になったので、庭をいろいろといじっていた。そのさい、上記の蟻の巣の上を何度か歩いてしまった。草に隠れていたからだ。植木に水をやるさいに、蟻の巣の上にもちょろっとかけたかもしれない。


2日ほど経ったころ、ふと見ると蟻がたくさん動いている。まさか、あの程度で引っ越しはないだろう、と高をくくっていた。ところが、さらに2日ほど経つと、かつてのムクゲの根本にまた蟻たちが戻っているではないか! そしてこれまでの巣はすっからかん。


よりによってなぜ元のところに戻るのだ。世界は広い。蟻たちよ、大志を抱け! と叫びたくなる。だがもう後の祭りだ。(よく考えると前の巣を再利用するのは効率的だ。)


がっくり。蟻たちを甘く見てはいけない。安易な感動に浸っていはいけない。永遠の闘いは続くのだ!


と思ったが、もうあっさり諦めることにした。好きにして、という感じ。こっちも好きにするから、という感じ。


それぞれがそれぞれのしたいようにするのだ!


QooQ. Powered by Blogger.