NextPublishingを通じてアマゾンのPOD出版をやってみた

2020/04/26

Amazon NextPublishing POD

t f B! P L

NextPublishingを通じて、アマゾンでオンデマンド出版(POD)をやってみました。



作るに当たって悩んだこともあったので、みなさんの参考になるように、経験をお伝えします。

NextPublishingを選んだわけ

いろいろと理由はありますが、主なものは以下の通りです。

印税が自由に決められる

印税を10%固定にしている業者もありました。たとえば、1000円の本なら、1冊売れれば著者に100円入ることになります。NextPublishingは、価格設定次第で20%とかの印税も可能です。しかも、NextPublishingのサイトで簡単に計算することができます。

見本を作ることができる

やはり、いきなり出版するのは不安です。見本書籍を見て、最終的なチェックができればそれにこしたことはありません。PDFだけでは気づかないこともあります。実際、大きなミスを防ぐことができました。

新しい章は常に右ページから開始するようにしていたのですが、見本書籍を作ってみると、特定の章だけ左ページから開始されていました。WordやPDFで十分にチェックしたつもりだったのですが、やはり偶数ページとか奇数ページとかの設定となると、普段使わないだけに混乱してしまうものです。

ただし、見本書籍は実物そのものの見本ではありません。NextPublishingが行うPODで作成されるもので、アマゾンが行うPODではないのです。そのため、用紙、インク、製本などが違っています。それでも見本書籍があるとないとでは大違いです。

見本書籍と実物の違いについては後述します。

PDFファイルの作成のしかたの詳しいガイドがある

非常に詳しいユーザーガイドがあります。これを読んでいると、自分でもできそうだという気がしてきます。実際、それに沿って順番にやっていくだけで原稿ができました。表紙はちょっと面倒だったのですが、ガイドにわかりやすく書かれているので、案外すぐにできました。

基本仕様

まず、最初に基本的なところを決めておきましょう。私の場合は以下のようにしました。

用紙サイズ:A5(148×210 mm)
綴じ方向:左とじ(横書き)
モノクロかカラーか:モノクロ印刷
本文用紙:ホワイト
表紙加工:光沢なし

本文の用紙と表紙加工については後で考えてもいいですね。

本文

ページ設定

Wordの「レイアウト > ページ設定」で、次のように設定しました。

「文字数と行数」タブ
 1行の文字数:35字、1ページの行数:28行

「余白」タブ
 余白:上21 mm、下21mm、内側18.4 mm、外側18.4 mm、とじしろ:0 mm
 複数ページの印刷設定 :「印刷の形式」は、「見開きページ」

「用紙」タブ
 A5 

「その他」タブ
 ヘッダーとフッター:「奇数/偶数ページ別指定」にチェック

本文のフォント

日本語用フォント:MS明朝、9pt
英数字用フォント:Century、9pt

フォントサイズは小さすぎる気がしますが、A5の本では普通の大きさです。どうしても小さすぎると感じるなら、10ptにしてみることもできるでしょう。ただ、大きな文字は本にすると間延びして見えます。不安ならA5用紙に印刷してみて、実際の本の文字と比べてみましょう。

章見出し

章見出しとは次の部分です。


ぜいたくに1ページを使っています。

フォント:MS明朝、14pt、太字

にしています。

大見出し(見出し1)


フォント:MS明朝、12pt、太字

中見出し(見出し2)


フォント:MSゴシック、10pt

脚注

フォントサイズ:8pt

ルビ

フォントサイズ:4.5pt 

ルビは親文字の半分が目安となります。文字は9ptですので、ルビは4.5ptにしました。

ルビを一つ一つ修正するのは手間ですね。なんと一括置換ができます。次の「よねさん」のサイトを見てください。

ルビのサイズを一括で変更したい

  1. まず、「Alt + F9」でルビのフィールドコードを表示します。
  2. 「hps10」の部分を「すべて置換」で、「hps9」にします。
  3. 「Alt + F9」でフィールドコードを非表示に戻します。
すごいです。いやあ、助かりました。「よねさん」ありがとうございました。

行間

行間:17ptの固定値 

Wordでは、ルビを振るとそこだけ行間が開いてしまいます。行間の不揃いを是正するには、行間を固定値にします。ルビをつけた章はすべて、行間を17ptの固定値にしました。必要なら、セクションを設定します。

ページ番号(ノンブル)

ページ番号は、ノンブルと言うようです。フランス語のnombre(英語のnumber)です。

ページ番号:8pt、Century
ヘッダーにつける
偶数ページでは左に、奇数ページでは右に表示

としました。

ページ番号には相当苦労しました。普通のWord文書のように、ページ下部(フッター)に「8」と数字だけを入れるか、せいぜいのところ「- 8 -」のようにすればよかったかなとも思います。

でも、いろんな本を見てみるとそうなっていないのが多いのです。偶数ページでは左に、奇数ページでは右にとなっています。

 

左ページは「88」、右ページは「89」となっています。

これまで多くの本を読んできましたが、こんなふうになっていることなど意識したことはありませんでした。でも、単に下にページ数が入るよりはカッコイイ気がしましたので、そうすることにしました。

アマゾンのPODでは、最初のページを必ず1ページにします。それで、Wordファイルの最初から最後まで通してページ番号を挿入します。

ただ、ページ番号を表示しないページもあります。本の題名があるページ、まえがき、目次、章題のみのページなどにはページ番号を表示したくありません。そうすると、それぞれをセクションで区切る必要が出てきます。

Wordでは「レイアウト」タブの「区切り」を使います。セクションで区切って、ヘッダーのページ番号を削除していきます。これが面倒なのです。偶数ページと奇数ページがあって、混乱します。

偶数ページと奇数ページに分けず、ページ番号を単純に下に書けばよかったと何度も思いました。でも、できてみると満足度も高いです。

「柱」というのがあります。これは何かと言うと、ページ番号の横についている章題などのことです。下の図では「解説」と入っています。


柱があると、目次がなくても、本をぱっと開いて目的の場所を探しやすくなります。あるいは、自分が今、本全体のどのあたりを読んでいるのかを確認することができます。

奇数ページにだけ、章題を入れました。「片柱方式」と言います。

フォント:MS明朝、8pt 
「ノンブル」とか「柱」などの業界用語を使っていると、ちょっとその道に入ったような気分がしてきます。

目次

目次項目はそれほど多いわけではないので、Wordの「目次作成機能」は使わず、すべて手作業で作成しました。



セクションを設定して、目次のページだけ全体を左右1文字分だけ縮めています。目次全体を選択して、右クリック、

段落 > インデントと行間隔

にある「インデント」の「左」と「右」をそれぞれ「1字」にします。

フォントの設定は、次のようになっています。

見出し:MS明朝、12pt、太字
章題:MS明朝、10pt、「段落前」は0.6行、「段落後」は0.1行あける
節の題:MS明朝、9pt、「段落前」も「段落後」も0行のまま
ページ:Century、9pt 

「見出し」とは、「目次」という文字のことです。
「章題」とは、「まえがき」「第1部」「第2部」「第3部」です。
「段落前」と「段落後」は、

段落 > インデントと行間隔 > 間隔 

で設定します。

「節の題」は、さらに下位レベルの「1.月に酔って」「2.コロンビーナ」などです。
「ページ」は、「……」(リーダー)の右端にある「10」などの数字です。

リーダー(「……」)ですが、Wordでは一つ一つ点を打たなくても、一気につける秘訣があります。
まず、節の題とページ番号の間に、タブを一つだけ入れておきます。

1.月に酔って → 10
2.おお なつかしい香りよ → 14 

矢印で示したのがタブ記号です。
上の2行全体を選択して右クリックし、

段落 > 体裁 > タブ設定(左下にあります) 

をクリックします。

タブ位置の下の空欄:34(数字を記入する)
配置:右揃え
リーダー:…………(5) 

すると、あ~ら、不思議。タブが「……」に変換されて、一気に次のようにそろいます。

1.月に酔って…………………………10
2.おお なつかしい香りよ…………14 

ちょっと感動します。
後は適当に半角スペースなりを入れて、整えましょう。

全体の構成

左とじの本の場合、本を開いたとき、左ページは奇数でしょうか、偶数でしょうか。
――答えは偶数です。

書籍では左側が偶数ページで、右側が奇数ページとなっています。つまり、紙の表が奇数で、裏が偶数です。
いろいろな本を開いてみると、そうなっていました。右とじの本では逆に、右が偶数ページで、左が奇数ページとなります。
どの本もちゃんとそうなっているのです。驚きです。まったく知りませんでした。

さて、本の最初の方は書名があったり、まえがきがあったり、目次があったりでややこしくなっています。どういうふうに構成したらいいのか悩みますね。
私は次のようにしました。

 

左は表紙裏です。それで白紙になっています。これは参考のために置いてみました。

右が第1ページとなります。アマゾンの規定では、最初のページをページ番号1にしなければなりません。上の図にはページ番号は入っていませんが、Wordの設定ではこれを1ページとしています。こんなところにページ番号を表示するのはみっともないので、消してあります。

ここにはあっさりと書名だけを書きました。

書名:MS明朝、12pt
副題:MS明朝、10pt 

となっています。

下図にあるように、3ページ目でまた書名を書くのに、なぜここにも書名を入れるのでしょうか。

実はよくわかりません。ただ、表紙を開くといきなり書名が出てくるのはあまりにも殺伐としているように感じます。遊びの紙が1枚入った方がゆとりができるように思います。その場合、1ページ目に書名がないと印刷所の人が困るからではないでしょうか。欧米のペーパーバックの研究書でもほとんどそうなっています。

 

左が2ページ目、右が3ページ目です。開いたときに、左が偶数ページ、右が奇数ページでしたね。

右ページに書名と著者名を書きます。これは右ページでないとかっこ悪いです。

書名:MS明朝、16pt
副題:MS明朝、12pt
著者名:MS明朝、11pt 

としています。今度はちゃんと大きく、しっかりと表示します。枠で囲っておしゃれにしてみました。

 

左が4ページ、右が5ページです。4ページ目がやはり空ページですが、これがゆとりというものです。実際、いろいろな本を見てみると、「まえがき」は右ページから始まっています。落ち着きがあります。
フォントは、

見出し:MS明朝、12pt、太字
本文:MS明朝、9pt
脚注:MS明朝、8pt
数字・欧文:Century 

となっています。

 

目次です。左が6ページ、右が7ページです。

目次も本来、右ページから始まったほうが落ち着きがあります。欧米のペーパーバックでもほとんど右ページから始まっています。でも、今回は一覧性を重視しました。訳詩を載せているので、詩の題が見開きにすべて収まるほうが探しやすいと思ったからです。

 

左が8ページ、右が9ページです。
左下に書いてあるのは、書物ぜんたいの表記に関する注です。よく凡例(はんれい)が書かれたりします。
右側の「第1部」が章題です。次のページ(10ページ)からいよいよ本文が始まります。

ということで、1ページから9ページまではページ番号を表示していません。全体を一つの「セクション」にして、ページ番号を消しました。次の10ページの本文からは別のセクションになります。そこからは、ちゃんと「10」とページ番号が表示されていきます。


奥付(おくづけ)も公開しちゃいましょう。

これは119ページ目になります。右ページです。ここもページ番号は非表示にしています。裏の120ページ目(最後のページ)は白紙です。

この奥付は、NextPublishingの「流通効率化支援オプション」を利用し、ISBNをつけた場合の例です。ISBNをつけたのは、大学で買ってもらったり、図書館などに入れてもらったりする場合はあったほうがいいかなと考えたからです。

著者名(漢字):MS明朝、10pt
著者名(ひらがな):MS明朝、8pt
書名:MS明朝、12pt
副題:MS明朝、10pt
それ以外:MS明朝、Century、9pt 

となっています。バランスよくするためにあれこれ試してみた結果です。実際にA5の紙に印刷してみるとよいでしょう。

表紙

表紙は知人に作成を頼みました。イラストです。文字のフォントはフリー素材を使っています。

  

左から、表紙、背表紙、裏表紙です。
見本書籍や実際の本には裏表紙右上にバーコードが入っています。

PNGの画像ファイルで作成し、それをPDFファイルに変換してもらいました。

表紙と裏表紙:W156 x H218 

A5のサイズにそれぞれ、4mm + 4mm = 8mmプラスしています。

背表紙:W14.87 x H218

幅は、6.864mm(0.0572mm x 120頁) + 4mm + 4mm=14.864mmとなりますが、大きくてもいいようですので、四捨五入して、14.87mmにすることにしました。実際にやってもらうと、使用ソフトの関係か、15mmになりました。それでも特に問題はありませんでした。

見本書籍と実物の違い

参考までに、NextPubulishingの見本書籍と比べて、アマゾンで販売される実物がどうだったかをお知らせします。

表紙

厚み
実物は、見本よりやや固めでしょうか。でもほとんど区別がつきません。


見本より若干薄くなりました。左が見本書籍、右が実物です。


青い夜空が、少し藤色がかっています。
ちょっとがっかりですが、そんなにこだわりはありません。
なお、文字がぼやけて見えるのは写真のピントが合ってないせいです。

手触り
見本はつるつるしています。実物はさらさら、かさかさしています。

本文

紙の厚み
実物は、見本よりやや薄めです。見本の方が高級感あり、実物は安っぽく感じます。でも、見本は画集とか、写真集とかにはいいでしょうが、普通の文字の書籍としてはやや厚すぎるように感じていたので、こちらのほうがいいです。紙が厚いと、開いたときに糊づけが取れ、パリッと開きっぱなしになってしまうことがあります。薄いと大丈夫そうな気がします。

紙質
見本はつるつるでしたが、実物にはざらつきがあります。こちらの方が欧米のペーパーバックらしい感じです。

紙の色
見本はまぶしいようなホワイトでしたが、実物はオフホワイトでしょうか。オフホワイトのほうが目にやさしそうです。

文字の色
若干薄めになりました。見本の方がくっきりしていました。これはややがっかりです。紙質とも関係しているのでしょうか。

本の重さ

本の総ページ数は、120ページです。本文の紙が見本書籍の方が厚そうなので、重さを量ってみました。

見本:205g
実物:174g

なんと31グラムも違っていました。手に持った感じではそれほど違いはないと思っていたのですが、数字的には大きな違いです。

見本書籍と実物との比較のまとめ

実物では、表紙の色がもっときれいに出ればよかったと思います。また、本文の文字もちょっとくっきり度が足りないかなと思います。

紙質はちょっと安っぽいですが、軽いので気に入っています。

人に贈る場合、やはり実物のほうがいいと思いました。

価格設定

私の場合、120ページ(カラーページなし)なので最低価格は1000円にしなければなりません。

1000円なら(税込み:1100円)、利益32円(4%)
1100円なら(税込み:1210円)、利益88円(8%)
1200円なら(税込み:1320円)、利益144円(12%)
1300円なら(税込み:1430円)、利益200円(16%)★
1400円なら(税込み:1540円)、利益256円(19%)
1500円なら(税込み:1650円)、利益312円(21%)

価格を1000円にすると、印税は4%の32円となります。とにかく多くの人に読んでもらいたいと思う人はそれでもかまわないでしょう。でも、執筆にかれこれ10ヶ月ほどかかったので、ちょっと寂しい気がしました。

NextPublishingでは20%くらいの印税にすると著者も満足できるとしていましたが、そうするには価格を1450円にしなければなりません。消費税を入れた価格は1595円になります。120ページの本で1500円を超えると、高すぎて誰も買わないでしょう。

それで消費税込みで1500円以下になるように、価格を1300円にしました。消費税と合わせて1430円で販売されることになります。これだと印税は16%で、一冊売れれば200円の利益ということになります。

費用

ISBN取得
5000円+500円(消費税)=5500円

見本書籍
1,045円(単価) + 350円(梱包送料) + 140円(消費税) = 1,535円

最初、118ページで見本書籍作りました。1,045円というのはそのときの単価です。
また、見本書籍は1冊しか購入しませんでした。見本書籍を作る前に、PDFファイルを徹底的にチェックしておくことが大事です。

まとめ

くれぐれも
最後にもう一度、目次の題とページが合っているかを確認してくださいね。あれこれ修正すると、つい忘れてしまうものです。

今回、作ってみて思ったこと
アマゾンでしか販売できないにしろ、ともかく予算をほとんど使わずに、自分で本を作り、販売できるということはすごいことです。注文があるたびに印刷する方式だと、無駄な在庫も出ないですしね。

それにデータだけなので、絶版になることもなく、ずっと残しておけます。需要が少ししかなくても、必要な人は買います。ネット上では埋もれてしまいますが、アマゾンなら検索でヒットする可能性も高いです。

全体的に、満足度は高いです。研究書などはこんな形でどんどん出していくのがよいと思います。日本ではほとんどの本が単行本か文庫ですが、欧米では研究書はペーパーバックで続々出ています。

あと、要望に応じてハードカバーにもできるようになればいいと思いました。そうすれば、ちゃんとした本がほしいという人も満足させられるでしょう。

みなさんも、どしどし出版してみましょう。

参考書籍

『Wordで本をつくろう ヨコ組編』日本エディタースクール、2003

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